平成29年9月23日(旧8月4日・祭) 大安 秋分の日(旧八月中)、秋季皇霊祭

 

東日本大震災 復興への道

東日本大震災に寄せて

このたびの東日本大震災で被災された方々に心よりのお見舞いを申上げますとともに、犠牲になられた方々に衷心より哀悼の意を表します。被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申上げます。

福島県内3,040の神社と約600名の神職を統括する福島県神社庁では、災害対策本部を設置し、神社本庁始め関係団体と連携して迅速な初動をなし、情報収集並びに復旧復興に取り組み、緊急支援物資を被災者に届けるなどの活動を展開致しておりますが、神社の被害は全県に及び、特に浜通り地区は甚大な被害を受けました。

県内神社においては、未曾有の大災害発生以来、地震と原発災害の安鎮と復興への祈りが日々続けられておりますが、福島県神社庁では被災されたすべての方々に、復興への一助として以下のメッセージをお送り申上げます。

鎮めの祈り

自然への畏れを忘れた民族は滅びると言われております。古来、我が国では「畏れ(おそれ)」こそが祈りの原点であり、神様に祈ることで人間は再び大いなる力を頂き、幾多の困難を克服してきました。皇室の年中行事が厳修され、全国津々浦々で行われている神社の神祭りを通じて、「畏れ」を語り伝えるとともに、国民は強い心の絆を確認し、大いなる安心を得てきました。

稲むらの火と皇后陛下の御心

安政元年(1854年)に発生した安政南海地震により紀州藩広村を襲った大津波から人々を救った偉人「濱口儀兵衛」の逸話は、小泉八雲が英訳し小説化したものですが、これが後に「稲むらの火」と題され、戦前の国定教科書に掲載されました。

『稲むらの火』より

「これはただ事ではない」とつぶやきながら、庄屋の五兵衛は家から出てきた。今の地震は、別に烈しいというほどのものではなかった。しかし、長いゆったりとしたゆれ方と、うなるような地鳴りとは、老いた五兵衛に、今まで経験したことのない不気味なものであった。

村では豊年を祝う宵祭りの支度の真っ最中、村人たちは地震も一向に気に留めぬ中、高台から海を眺めていた五平衛は、ただならぬ海の様子に大津波の襲来を感じ取った。このままでは400もの命が村もろともひと飲みにやられてしまう、もう一刻も猶予はできない。

五兵衛は、大きな松明(たいまつ)を持って外に飛び出した。そこには取り入れるばかりになっているたくさんの稲むら(稲の束)が積んであった。「もったいないが、これで村中の命が救えるのだ」と、五兵衛は、躊躇なく自分の田のすべての稲むらに火をつけた。風にあおられて、稲むらの火は天をこがした。この火を見た村人たちは一斉に山手へ駆け出した。五兵衛は、後から後から上がってくる老幼男女を一人一人数えた。

その時、五兵衛は力いっぱいの声で叫んだ。「見ろ。やってきたぞ」一筋の線が見えたと思うと、その線は見る見る太くなり広くなって非常な速さで押し寄せてきた。海水が、絶壁のように目の前に迫ったかと思うと陸にぶつかってきた。村の上を荒れ狂って進み退く白い恐ろしい海を村人たちは息をのんで見つめた。一同は波にえぐりとられてあとかたもなくなった村を、ただあきれて見下ろしていた。

はじめて我にかえった村人は、稲むらの火によって救われたのだと気がつくと、無言のまま五兵衛の前にひざまづいたのであった。

平成11年には、皇后陛下が御誕生日の記者会見で「子供のころ教科書に、確か『稲むらの火』と題し津波の際の避難の様子を描いた物語があり、その後長く記憶に残ったことでしたが、津波であれ、洪水であれ、平常の状態が崩れた時の自然の恐ろしさや、対処の可能性が、学校教育の中で具体的に教えられた一つの例として思い出されます」と御回答をされていたことが思い起こされます。

天皇陛下の大御心(おおみこころ)

天皇陛下におかれては、去る3月16日、国民に向けてのお言葉をビデオメッセージの形で語りかけられました。被災者の身を案じられ、救援関係者を労われ、希望を捨てず、苦難を分かち合って乗り越えることを願われました。

御歴代の天皇は、日照りが続けば川辺にひざまずき、四方を礼拝し天を仰いでは一心不乱に民衆のため降雨を祈願されました。今回の大震災に対して陛下がいかに御心を痛められ、その救援と復興の急務を切望しておられるかが拝察されます。

いうまでもなく国家の非常時において真に国民が拠り所とする御存在は皇室をおいて他にありません。たとえ行政や国家機能そのものが危機にあっても、国と国民全体を秩序ある国家国民として統合しうる唯一の御存在が皇室なのであります。このたびの大御心によって私たちは改めてその有り難さを確信致しました。

陛下はまた「皆が相携え、いたわり合って、この不幸な時期を乗り越えることを衷心より願っています」との御言葉を述べられました。震災後の、取り乱すことなく秩序ある行動をした我が国民の姿を、驚嘆と賞賛を以て評価する海外の論調を忘れてはなりません。そして皇室をいただく我が国がらを、今こそ思い返したいものです。

国民の誇りで立ち上がろう

福島県神社庁では、氏神さまの御社殿と鎮守の杜の復興こそが地域力の復活につながることを信じ、県内の神社では日々「鎮めの祈り」を捧げ続けております。今、私たちは大きな苦難に直面しておりますが、皇室を戴く我が国民の誇りをもって相睦み、諦めずに立ち上がらなければなりません。日本民族の魂が覚醒し、復興に向け結束した時の国民の強靱さを、再び世界に示そうではありませんか。

平成23年4月

福 島 県 神 社 庁