第3章 神社のお祭り

一、お祭(まつ)り

神社ではなぜしょっちゅうお祭りをするの?

 「まつり」の語源は、動詞の「まつる」からきています。「まつる」とは、①神さまのお出ましを「待つ」②神さまに供物などを「献(たてまつ)る」③神さまに従う「服(まつろ)う」などが考えられます。これを全部合わせると「神さまをお迎えして、神さまに物を捧げて、心から神さまに従う」という意味になります。このように、神さまにお仕えすることがお祭りの本義なのです。
 お祭りは、一年を通じ数多く斎行されています。毎日行われる日供(にっく)祭を始め、恒例の例祭や臨時に行われるお祭りなど、それぞれ意味をもち厳修されています。
 次に、この様々なお祭りをご紹介します。

二、日供祭(にっくさい)

神さまは一日何食?

 日供祭は、毎日朝と夕に神さまにお供え物をするお祭りです。私たちが毎日食事をするように、神さまにもお供え物をお召し上がりいただき、日々の氏子・崇敬者の安寧(あんねい)を祈ります。
 伊勢の神宮では、日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)(常典御饌、じょうてんみけ)が毎日朝夕奉仕され、外宮の御饌殿(みけでん)において天照大御神をはじめ諸神に神饌(しんせん)をお供えします。
 日本人が一日三食の食事をとるようになったのは、江戸時代からといわれています。それ以前は、一日二食が日本人の食生活でした。その伝統が引き継がれ、今でも神さまの食事は朝夕二食なのです。

三、月次祭(つきなみさい)

「つきなみ」とは月毎に平和と安全を祈るお祭り

 月次祭は、毎月行われるお祭りのことです。それぞれの神社で期日が違いますが、毎月一日や十五日に行われているところが多いようです。国の平安と、氏子崇敬者の安泰を祈ります。月参りともいわれ、この日にお参りするとご利益があるともいわれています。

四、例祭(れいさい)

神社で行われる最も大きなお祭り

 例祭(れいさい)は、神社で行われる最も重要で盛大なお祭りです。年に一回(神社によっては年二回)行われる祭典で、一般に例大祭ともいわれています。例祭では、神さまの御神徳を称え、皇室のご安泰、氏子・崇敬者の繁栄、五穀豊穣などが祈られます。二月に行われる祈年祭(きねんさい)、十一月に行われる新嘗祭(にいなめさい)とともに三大祭の一つに定められています。
 例祭の期日は、神社によってそれぞれ異なりますが、おまつりされている御祭神に関係のある日や、神社が創祀(そうし)された日など、御祭神や神社に特別にゆかりの深い日が選ばれています。
 この日、境内では流鏑馬(やぶさめ)・相撲(すもう)などの神事や、御神楽(おかぐら)・獅子舞(ししまい)などの芸能が行われる神社もあります。参道には露店が並び、境内は大勢の参拝者でにぎわいます。また、神輿渡御(みこしとぎょ)が行われる神社もあり、ふだんはご本殿にお鎮まりになっている神さまが、お神輿にお乗りになり、親しく氏子近くにお渡りになります。

五、歳旦祭(さいたんさい)

年の始めに平和と安全を祈るお祭り

 歳とは年、旦とは日の出を意味し、元日の早朝に行われるお祭りで、年頭に当たり一年の無事平安を祈るお祭りです。

六、元始祭(げんしさい)

皇位の大本(おおもと)を祝うお祭り

 元始祭とは、連綿と継承されてきた天皇のお位の根本、つまり天照大神が孫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を天上の高天原(たかまがはら)から地上の豊葦原中国(とよあしはらのなかつくに、日本)に遣(つか)わされ、国土を治めたその由来を祝って、一月三日に行なわれるお祭りです。宮中では、宮中三殿において天皇陛下御親(おんみずか)ら奉仕されます。神社では、皇室の弥栄と国の隆昌とを祈りお祭りが行なわれます。

七、紀元祭(きげんさい)

日本の建国(国の誕生)を祝うお祭り

 わが国の建国は、神武天皇(じんむてんのう)が大和の橿原宮(かしはらのみや)で即位された辛酉(かのととり)(西暦紀元前六六〇年)正月一日を紀元とし、新暦にあたる二月十一日を紀元節と定めました。紀元節は、戦後一時廃止されましたが、昭和四十一年に建国記念の日と名を改め制定されました。
 この日、神武天皇をまつる橿原神宮(かしはらじんぐう)では例祭日となっています。各地の神社でも建国を祝い、神武天皇の偉業を偲び、日本国民としての自覚を深める意味をこめて紀元祭を行っています。

八、祈年祭(きねんさい)

「年」って実は稲のこと 稲を祈るお祭りって?

 祈年祭は、「としごいのまつり」といい、毎年二月十七日に行われるお祭りです。神社の恒例のお祭りの中で、重要なお祭りの一つです。
 祈年祭の「年」は稲の稔りの意味で、古来年の初めにあたって、穀物の豊穣を祈るとともに、国の安泰を祈る祭りでした。収穫の秋に豊かに稔った新穀を神前に供え、神さまの恵みに感謝する新嘗祭(にいなめさい)と対をなすお祭りです。
 日本の国は、稲作を中心とする農業をもとに栄え、神社のお祭りもこの稲作を中心とする五穀豊穣が祈願されてきましたが、さらに諸産業の繁栄を祈る祭りとして今日に至っています。宮中や伊勢の神宮をはじめ、全国の神社で行われています。

九、神嘗祭(かんなめさい)

「嘗(なめ)」って新米を召し上がること

 神嘗祭は、伊勢の神宮の年間最大のお祭りで、毎年十月十七日に行われています。神宮では、年間千数百回のお祭りが行われていますが、この中でも神嘗祭と六月・十二月の月次祭(つきなみさい)は三節祭といわれ、最も重要なお祭りとされています。
 天皇陛下が御手ずから丹精込めてお作りになられた新穀をはじめ、全国の篤農家から奉納された新米を供え、神さまにお召し上がりいただきます。米の稔りに感謝し、その喜びをともに分かち合うおめでたいお祭りです。神嘗祭には、天皇陛下のお使いである勅使が参向し、皇室よりの幣帛がお供えされます。この毎年行われる神嘗祭が、二十回重ねられると大神嘗祭(だいかんなめさい)つまり御遷宮(ごせんぐう)となるのです。
 稲は「命の根」だからイネといい、「米」には穀物の霊(みたま)が込められているからコメと言います。新米には、「新しい命の根」つまり新鮮な瑞々(みずみず)しい生命力が込められているのです。その新米を神さまが召し上がることにより、生命力つまり御神徳(ごしんとく)が昂(たかま)り、神さまのお力が更新されるのです。

十、新嘗祭(にいなめさい)

このお祭りまでは新米を食べてはいけないの?

 新嘗祭は、十一月二十三日(古くは十一月の第二の卯の日)に宮中および全国の神社で行われる収穫感謝のお祭りです。新嘗とは、「新饗(にいあえ)」の意味で、「新」は新穀、「饗」はご馳走(ちそう)を意味します。春のはじめに祈年祭を行い五穀の豊穣を祈るのに対し、収穫の秋に豊かに稔った新穀を神前に供え、神さまの恵みに感謝するのが新嘗祭です。起源は古く、『古事記』に天照大御神が祭りを行ったことが記されています。
 宮中では、深夜にわたるお祭りを奉仕され、天皇陛下御親らが天神地祇(てんしんちぎ)に新穀をすすめて、ご自分もお召し上がりになられます。また、年毎の新嘗祭に対し、天皇の即位後初めての新嘗祭を大嘗祭(だいじょうさい)といいます。
 全国の神社では、新穀感謝と諸産業発展の感謝も合わせて祈られます。現在では、勤労感謝の日として国民の祝日となっていますが、このお祭りに由来しています。
 その年に初めて収穫されたお米のことを初穂といいます。もともと最初に収穫された稲穂を、感謝をこめて神さまにお供えすることを意味していました。ですから、新米は先ず神さまにお供えしてから、私たちがいただくのが本義です。初物をお供えすることと同じ意味です。

十一、天長祭(てんちょうさい)

天皇陛下のお誕生日をお祝いするお祭り

 天長祭とは、天皇陛下のご誕生を祝い、聖寿の長久を祈るおまつりです。天長とは、天地とともに聖寿の限りなきことを言祝(ことほ)ぐという意味です。
 戦前、天皇誕生日は天長節といわれました。奈良時代光仁天皇の宝亀六年(西暦七七五年)に始めて行われた行事です。宮中では、天長節祭が行われ、陛下御親ら宮内官僚を率いられ、宮中三殿(賢所(かしこどころ)・皇霊殿(こうれいでん)・神殿(しんでん))を御親拝になられます。新年・紀元節・明治節とあわせて、四大節といわれていました。なお、天長節に対して、皇后陛下のお誕生日を地久節(ちきゅうせつ)といいます。
 現在の天皇誕生日は、十二月二十三日です。また、昭和天皇のお誕生日の四月二十九日は「みどりの日」の祝日とされてきましたが、平成十九年より「昭和の日」と名称が改められました。

十二、大祓(おおはらえ)

「お祓い」こそお祭りの原点 年二回心身の大そうじ

 知らず知らずに犯した罪(つみ)や過ち、心身の穢(けが)れを祓い清める神事を「大祓(おおはらえ)」といいます。毎年六月と十二月の晦日(みそか)の二回行われます。
 六月の大祓を夏越祓(なごしのはらえ)または水無月祓(みなづきのはらえ)ともいいます。夏越祓では、茅(ち)の輪(わ)くぐりが広く行われています。これは、蘇民将来(そみんしょうらい)が無塔神(むとうのかみ)に一夜の宿を提供したところ、「もしも、後世に疫病がはやったならば、蘇民将来の子孫であるといって茅の輪を腰につけなさい」といわれ、その通りにして疫病を免れることができたという神話に基づくものです。
 六月の夏越祓に対し、十二月の大祓を年越祓(としこしのはらえ)または師走祓(しわすのはらえ)といい、その年の下半期の罪・穢れを祓い清め、清浄な心身で正月を迎えるために行います。
 大祓では、「人形(ひとがた)」(紙を人の形に切り抜いたもの)を用いて、身体を撫で息を吹きかけ、そうすることにより自分の罪・穢れを移して、海や川に流し、わが身の代わりに清めてもらいます。お祓いとは、神道の精神である清浄な心身を回復し、神さまの御心に近づく大切な行事なのです。

十三、祝祭日のお祭り

国民の祝日に行われるお祭り

 国の伝統や文化・歴史に由来した日を、「国民の祝日」として定めています。現在、祝日は一年に十五日あります。それぞれの祝日には、それぞれに意味や由来があります。

元日一月一日年の始めに年神様をおまつりする。宮中では、天皇陛下が「四方拝(しほうはい)」を取り行われ、神社では歳旦祭が行われる。
成人の日一月第二月曜日
(もとは小正月一月十五日)
神社では二十歳を迎えた男女の成人奉告祭が行われる。
建国記念の日二月十一日神武(じんむ)天皇が橿原の宮に即位され、初代の天皇となられた日を記念して全国の神社では紀元祭が行われる。
春分の日三月二十一日頃
彼岸宮中では、歴代の天皇・皇后・皇族のみたま祭り「春季皇霊祭(しゅんきこうれいさい)」が行われる。
昭和の日四月二十九日激動の昭和を国民と共に歩まれた昭和天皇のお誕生日。
憲法記念日五月三日日本国憲法の施行を記念。
みどりの日五月四日自然に親しみ、恩恵に感謝。
こどもの日五月五日子供の人格を重んじ、幸福を祈る。
海の日七月第三月曜日海の恩恵に感謝。
敬老の日九月第三月曜日老人を敬愛し、長寿を祝う。
秋分の日九月二十三日頃
彼岸宮中では、歴代の天皇・皇后・皇族のみたま祭り「秋季皇霊祭(しゅうきこうれいさい)」が行われる。
体育の日十月第二月曜日昭和三十九年十月十日に開会式を行った東京オリンピックを記念。
文化の日十一月三日近代日本の礎(いしずえ)を築かれた明治天皇のお誕生日。戦前は「明治節」といった。
勤労感謝の日十一月二十三日宮中では、天皇陛下が神々に新穀をお供えし、ご自身もお召し上がりになる新嘗祭が行われる。全国の神社でも、新穀の収穫を感謝する新嘗祭が行われる。
天皇誕生日十二月二十三日今上陛下のお誕生日を祝い、神社では天長祭を行う。

十四、臨時祭(りんじさい)

特別なことのために臨時に行われるお祭り

 神社の祭りは、大きく三つに分けられます。毎年同じ時期に行われる恒例祭、特定の年数を隔(へだ)てて行われる式年祭、不定期に行われる臨時祭です。この臨時祭は、ご神体を新しいお宮に移す遷座祭を始め、祈雨祭のような諸祈願祭や感謝祭、また地鎮祭・上棟祭・新宅祭・除幕式・渡橋祭・進水式などその種類は多岐にわたります。

十五、私祭(しさい)

個人の祈願祭

 神社で行われる恒例のお祭りに対し、個人の祈願をするお祭りを私祭(ご祈祷)といいます。社殿でお祓いを受け、祝詞(のりと)を奏上していただき、祈願を込めたお神札やお守りを頂戴します。

コラム

雅楽(ががく)・祭祀舞(さいしまい)

神さまにおよろこび頂く歌舞音曲(かぶおんぎょく)

 祭典に参列されて、雅楽の演奏や巫女(みこ)の舞などをご覧になったことがあると思います。これは、お祭りの厳粛な雰囲気を醸(かも)しだすとともに、神さまのご神恩に感謝し、およろこび頂く意味があります。
 雅楽は、今からおよそ千三百年前に中国大陸や朝鮮半島から伝わった音楽が、わが国古来の音楽とむすびつき、日本独特のものとして長い年月にわたり受け継がれてきたものです。雅楽は、その内容により楽器だけによる合奏「管弦(かんげん)」・合奏と舞をあわせた「舞楽(ぶがく)」・和歌や漢詩に曲を付けた「歌曲(かきょく)」・古くから日本にあった歌舞「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」とに分類されます。楽器には、管楽器の「笙(しょう)」・「篳篥(ひちりき)」・「龍笛(りゅうてき)」、打楽器の「太鼓(たいこ)」・「鉦鼓(しょうこ)」・「鞨鼓(かっこ)」、弦楽器の「楽琵琶(がくびわ」・「楽筝(がくそう)」などがあります。
 祭典でよく目にする歌舞には、「朝日舞(あさひまい)(宮司舞(ぐうじまい)」・「豊栄舞(とよさかまい)(乙女舞(おとめまい)」・「浦安の舞(うらやすのまい)」などがあります。