祭事記

伝統や風習の起源やしきたりなどの基礎知識を紹介しています。

お彼岸

お彼岸

もともとは日本に昔からあった先祖まつり

春分と秋分の日を、中日とした七日間を彼岸といいます。

この期間に法要や墓参りをしたり、お寺では彼岸会(ひがんえ)が催されるなど、仏教の影響が色濃く感じられます。しかし、仏教思想とは解釈できない要素が含まれていて、もともと我が国固有の信仰行事が、基調をなしていることがわかります。

秋田県では春の彼岸に、田んぼの雪の上に家々から貰い集めたワラを積み重ねて燃やす行事があります。これは彼岸の入りの日に行う行事で、盆の精霊(しょうりょう)迎え・精霊送りと同じような迎え火・送り火で、盆の場合と同じような唱え言をいうところもあります。新潟にも彼岸の入り・中日・明けの三回ワラ火を焚き、中日には山の上で一〇八のあかりを焚くところがあるといいます。

また日の出日の入りを拝んだり、「今日さんむかえ」といって、中日の朝弁当を持って日の出る東の方へ向いて歩いて行き、午後には西の入日に向って帰ってくるところもあるといいます。

この彼岸の期間に法会や墓参りを行うようになったのは日本独自のことで、その背景には太陽崇拝の原始信仰があったためといわれています。民間には日願(ひがん)日天願(にってんがん)という言葉とともに、彼岸に太陽を追いかける習俗などがありました。

これらの習俗と仏教が説く西方浄土に往生できるという信仰が習合して、彼岸の行事が行われるようになったと考えられます。信仰の基調をなしたものはあくまでも我が国固有の行事だったのです。
イラスト提供:福島県神道青年会