祭事記

伝統や風習の起源やしきたりなどの基礎知識を紹介しています。

お花見

お花見

行楽行事?いいえ「春祭り」の原形で大切な神事

桜は古くから日本の山野に自生していた植物で、日本では花といえば桜と言われるように親しまれてきました。それは桜が、穀物の神さまの宿る木とされてきたからなのです。サクラの「サ」は稲の霊を意味している言葉であるといわれます。例えば稲を植える月を、「サツキ」と言い、苗のことを早苗(さなえ)というように、稲にまつわる言葉にはほとんどといっていいほど「サ」がついています。一方、サクラの「クラ」はお神楽などでわかるように、神さまのお座(すわ)りになる場所と言う意味です。サクラとは稲の霊、つまり稲の神さまのいらっしゃる所、神さまの宿られるとても神聖な木ということです。

毎年稲作りの作業が始まるのは、桃の節供、つまり旧暦の3月3日、今でいうと4月中旬の頃でした。山に桜の花が咲くのはそれよりやや早い四月初めの頃です。長い冬が終わり、いよいよ今年も稲作を始めようというとき、人々は農閑期には山に帰ると信じられていた「田の神さま」をお迎えするために山に行きました。そこで見たのが、まるでたわわに稔った稲穂のように白い花をいっぱいにつけている桜の木でした。

人々は、この桜の木にきっと稲の霊が宿っているに違いないと感じて、桜の木にお供えものをして田の神さまに豊作を祈願したのです。こうしてお花見は、稲作と切り離せない重要な行事になってきたのです。