神社庁報

福島県神社庁から皆様へのお知らせなどをご案内しています。

令和5年度東日本大震災物故者慰霊祭斎行

2024年3月12日

3月8日午前11時より、双葉郡双葉町大字中野に鎮座する八幡神社(高倉洋尚宮司)に併設された「合祭殿(遥拝殿)」において、「東日本大震災物故者慰霊祭」が厳粛に斎行されました。

慰霊祭には約40人が参列し、丹治正博庁長、遺族代表 佐藤大和副庁長が玉串を捧げ、図らずも震災の犠牲となった数多の御霊に、安寧と復興への祈りを捧げました。

結びに、丹治正博庁長による挨拶文を掲載いたします。

ただ今は、福島県神社庁の主催による東日本大震災発災13年の物故者慰霊祭がここ双葉町中野鎮座の合祭殿に於いて山名隆史教化部長が斎主を務め、浜地区三支部の祭員の奉仕のもと、神社庁役員を始め、関係各位のご参列を賜り、恙無く斎行されました。先の大震災で尊い命を落とされた方々、また震災後の災害関連死で亡くなられた多くの方々、そして未だ行方不明の多くの方々の御霊の安らかならんことを、福島県内2984社を代表してお祈り申し上げました。

また、元日に発生しました能登半島地震によりお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された方々、また神社関係者に対し衷心よりお見舞いを申し上げます。皆様方には13年前の大震災を思い起こされるとともに、道路の損傷による集落の孤立や、進まないインフラの復興、漁港の壊滅的被害、また伝統産業である輪島塗の甚大な被害など、時々刻々と変化する現地の状況をもどかしい思いで見守っておられることと存じます。神社庁では現在、県内神社に対して義捐金の募集をお願い致しておりますが、被災地の1日も早い復興を祈るばかりであります。

あの忌まわしい大震災から早13年の歳月が流れましたが、被災神社の現況を申し上げますと、現在、双葉支部内の帰還困難区域に鎮座して立入りが制限されている神社は34社となっております。これら神社は今後除染が進むとともに、放射線量の自然低減によりいずれ解除が視野に入っているものの、そのうち双葉町と大熊町にまたがる中間貯蔵施設内に鎮座している8社については、神社の復旧改修も目処が立たぬ状況にあり、神社の存続は危機的な状況にあります。

こうした中、去る2月18日に浪江町請戸の野神社で例祭に合わせて新社殿の竣功奉告祭が斎行され、私は神社庁を代表して参列致しました。野神社は、請戸海岸至近に位置していたことから、大津波で流失した上に、県内で唯一、宮司と家族が犠牲となった神社であり、その後請戸地区は津波浸水区域に指定され、建物の再建が一切出来なくなった事から、私はその行く末を案じておりました。氏子や避難先から集まった元住民ら約200人が集う中、田村貴正宮司斎主のもと神事が執り行われました。神事に続く神賑行事では請戸芸能保存会による獅子舞や田植踊の奉納が行われ、悲願の神社再建を祝い合いました。当日の私の所感を神社新報に寄稿致しましたので、掲載されましたらお読み頂ければ幸いです。

神社庁では、被災神社の再建事業につき全国から寄せられました神社復興支援金の一部を原資とする基金を設け、「東日本大震災被災復興基金管理審議委員会」の管理のもと、神社再建への助成を行って参りました。2月21日現在の義捐金の累計は5億864万円で、その内訳は神社本庁からの神社復興支援金が4億3832万円、その後、全国から今日まで寄せられ続けている義捐金が7320万円に上ります。本庁からの支援金のうち約1億円と、その後の義捐金を基金の原資として復興基金がスタートしましたが、時々刻々変わる被災神社を取り巻く状況に配慮し、9年間で実に10回の指針の改定を重ね、被災神社に寄り添って参りました。助成の実績につきましては、平成25年4月より今日までの9年間で累計助成件数が74件、助成金額にして8347万円にのぼります。一昨年の令和4年にこの基金の当初の助成期間である10年を迎えましたが、近年、ようやく再建に向けた動きが見られることから、助成期間の延長でこれに対応してまいりました。未だ再建計画さえ立てられない神社も一定数あることから、審議委員会では、今後とも被災神社への支援を継続して参る所存でございます。

ここ合祭殿が位置する国営の追悼・祈念施設「福島県復興祈念公園」の整備はご覧の通り進んでおり、合祭殿の周囲の景観も昨年から大きく変貌を遂げております。こうした中で、合祭殿を活用した被災神社による祭典・行事の実施促進に向け、双葉支部内神職への働きかけを行って参りましたが、活用が進んでいない状況が続いており、神社庁としては憂慮いたしております。

今後、公園が完成のあかつきには、合祭殿及び境内において各神社が神事を執り行い、合わせて公園内の「お祭り広場」を活用しての神事芸能をはじめ放生会、流鏑馬、山車の引き回し、子供相撲大会などの稽古、発表に連動させる事を目論んでいます。憲法の政教分離原則への抵触を回避しながら、神事を厳修し、神賑行事と連動させるという、被災神社復興の先進事例として全国に例を見ない本事業は、本県被災地神社にとっても復興の象徴とも言うべき事業となりますことから関係する皆様方の更なるご理解とご協力をお願い申し上げるものであります。

神社庁はこの13年間、試行錯誤を繰り返しながら、被災神社に寄り添う努力を続けて参りました。私たち神社関係者は、これから先も大震災の惨禍を忘れることなく節目節目で御霊の安寧と復興への祈りを捧げ続けること、そして被災神社の信仰を子々孫々にまで守り伝える努力を怠らないことをここに御霊等にお誓い申し上げます。

結びに、本日の慰霊祭の斎行にあたりご協力を賜りました浜地区3支部(双葉支部、相馬支部、いわき支部)の皆様、祭典奏楽のご奉仕を頂いた福島県雅楽会の皆様、その他ご関係の皆さまのご奉仕に対し、心よりの感謝を申し上げ、庁長の挨拶と致します。本日はまことにありがとうございました。