神社庁報

福島県神社庁から皆様へのお知らせなどをご案内しています。

第39回神職研修会開催

2018年8月10日

 去る5月10日・11日の2日間、福島県神社庁主催の第39回神職研修会が開成山大神宮参集殿を会場に67名の参加のもと、開催された。
 第1日目の第一講は、特定非営利法人地球の緑を育てる会理事長・石村章子氏を迎えて「潜在自然植生による森づくり」と題し、横浜国立大学名誉教授で同会顧問の宮脇昭氏の提唱する森林生態系の再生方法について講義を頂いた。事前の植生調査によって、その土地本来の主役となる樹種を把握し、ふるさとの木を活かした植樹による、ふるさとの森の再生は、数千年、数百年、お社とともに守り伝えられてきた鎮守の森を更に未来へと守り伝えて行く上で、我々神職にとって意義深い内容であった。
 第一講を受けて第二講は「鎮守の森の再生と実践」と題し、一般財団法人日本文化興隆財団事務局長・佐久間宏和氏により、潜在自然植生による森づくりの実践例を紹介頂いた。同財団は、東日本大震災で失われた鎮守の森の再生事業に発災の翌年から取り組んでおり、平成27年までに11ヵ所、約30,270本もの樹木が約4,700人の参加者の手により植えられ、植樹する上での地域毎の課題をどのように解決していったか等、詳しく説明を頂いた。また、阪神淡路大震災では森が火災の延焼を止めたこと、タブノキ1本が消防車1台に匹敵すること等、命を守る鎮守の森の重要性を再認識した講義であった。
 第三講は、日本文化総合研究所代表・高森明勅氏を迎え「天皇陛下御即位三十年と御代代り」と題し、明年4月30日に今上陛下のご譲位が定められた今、①世界の君主国との比較による天皇(皇室)の特異性、②憲法が規定する唯一の「日本国の象徴」且つ「日本国民統合の象徴」という天皇の地位についての正確な理解を示された上で、今上陛下の国民を想う御心、大震災以来の福島に対する並々ならぬ思し召しについて講義を頂いた。講義中、高森先生は何度も「皇位の継承は自然現象ではない」と訴えられたが、昭和天皇の御心を受け継ぎ、そして深められ、日本全土を行幸され紡ぎ合わせてこられた今上陛下の御姿こそその言葉の真意であり、参加者それぞれ、歴代天皇が受け継がれてきた大御心に思いを致し、真の皇位継承の尋常ならざる重みを感じていた。
 第四講は、前回に引き続き國學院大學研究開発推進機構助教・渡邉卓氏を迎え「古事記の解説―神祇と神話―」と題して、前回の復習として古事記の成立・特色・意義について説明頂いた上で、古典と祭祀との関係性について講義を頂いた。四季の祭祀の配列と古事記の説話の進行が併行すること、説話の中心が神事・由緒・神徳にもとめられること等、古典と祭祀との密接な結び付きを示され、神職にとって神道古典の理解の重要性を改めて感じた講義であった。
 2日目は神職大会が開催され、冒頭、丹治庁長より平成30年度の事業執行所信説明があり、続いて昨年度設置された「過疎地域神社活性化推進委員会」について、地域の祭礼行事等の回復・活性化による過疎化対策という今後の活動の方向性が山名委員長より示された。その後、参加者より各神社の具体的取り組みの報告がなされた。また、参加者より事前に提出された神社庁に対する要望等のアンケートの中から、鹿島大神宮禰宜・渡辺雅子氏より群馬県高崎市の山名八幡宮の地域活性化への取り組みが紹介された。最後に「福島県における復興祈念公園基本構想」への神社庁要望採択までの経過について丹治庁長より説明があり、「復興祈念公園基本構想のパブリックコメント」について参加者によるグループ討論が行われた。福島の心の復興と伝統文化の継承のため、復興祈念公園のより良い姿について活発な議論が交わされ、各グループの代表による発表で神職大会を閉じた。
【岩瀬支部 佐伯禎國】