第4章 神社のお参りの作法

お子さんにも教えてあげましょう

 神社には、古くより伝えられている独特の作法があります。神さまに対する自分の気持ちを形として表すのがこの作法です。作法をよく理解し、思いを込めて清浄な気持ちでお参りします。

一、手水(てみず)の作法

柄杓(ひしゃく)に口をつけてはいけません

 まず、神社の入り口には鳥居があります。鳥居をくぐるときは、気持ちを静かに、頭を下げてくぐります。他の人の家を訪問するとき、いきなりドアをあけたりしないことと同じです。また、参道を歩くときは、神さまの真正面にあたる中央をはずします。
 次に、鳥居をくぐりぬけると、手水舎(てみずしゃ)といって、手や口をお清めするところがあります。お清めの作法は、①まず柄杓(ひしゃく)を右手に持ち水を汲みます。その水を左手にかけ、洗い清めます。②今度は柄杓を左手に持ち替え、同じ様に、右手を洗い清めます。③次に柄杓を右手に持ち替えて、左手に水を受けて口をすすぎます。④最後に、口をすすいだ左手を洗い清めます。柄杓に直接口をつけてはいけません。

二、初穂料(はつほりょう)

のし袋には何て書くの? 

 神前に金銭や食物・お酒などをお供えするときの表書きには、「御神前」「御供」「玉串料」「御榊料」「上」「奉献」「奉納」などが用いられますが、神社でのご祈祷や地鎮祭などののし袋には「初穂料」と書くのが一般的です。
 初穂とは、その年に初めて収穫されたお米のことです。もともと最初に収穫された稲穂を、感謝をこめて神さまにお供えすることを意味していましたが、後に穀物以外にも初めて収穫された野菜・魚・獣などにも用いられるようになり、さらにお米の代わりにお供えする金銭にも、使われるようになりました。

三、お参りの作法

日本人の常識が問われます

 神社の前に立ったら、鈴がある場合にはそれを鳴らします。これはその鈴の音で自らを祓い清めるという意味と、お参りに来たことを神さまにお知らせするという意味があります。
 次にお参りの作法ですが、①先ず二回深くお辞儀をします。次に心静かにお祈りをします。お祈りをする時は、声を出しても、心の中でお祈りしてもどちらでも結構です。②次に二回手をたたき、③その後一回深くお辞儀をします。「二礼二拍手一礼」これがお参りの作法です。
 二回お辞儀をし、二回手をたたくのは丁寧に神さまにご挨拶したいとの思いからです。

四、玉串奉奠(たまぐしほうてん)の作法

これが出来ればあなたは神社通(つう)

 正式参拝やご祈祷など昇殿のお参りの際は、玉串を捧(ささ)げて拝礼します。これを玉串奉奠といいます。玉串とは、榊などの常緑の小枝に白い紙を切った紙垂(しで)を付けたものです。作法は、次の通りです。
①神職から手渡された玉串を、右手で根元を上から持ち、左手で榊の中程を下から支え、胸の高さに持ちます。
②神前に置かれた案(机)の前に進み、一礼をして玉串を立て、左手を下げて右手にそろえ、玉串に祈りをこめます。
③右手で玉串の中央を下から支え根元を時計回りに神前に向けお供えします。この後、二礼二拍手一礼の作法でお参りします。

五、ご祈祷(きとう)

お参りから一歩進んだ祈願を受けてみよう

 神社で行われる恒例のお祭りに対し、個人の祈願をするお祭りをご祈祷(私祭)といいます。社殿でお祓いを受け、祝詞(のりと)を奏上していただき、祈願を込めたお神札やお守りを頂戴します。
 祈願の内容は、家内安全・商売繁昌・交通安全・大漁満足・身体健全・厄除け・方位除け・安産祈願・初宮参り・七五三・合格祈願・良縁祈願・必勝祈願など多岐にわたります。ご祈祷には、願い事をする祈願と、祈願が成就したお礼をする報賽(ほうさい)の二つに大別されます。「困ったときの神頼み」といいますが、お願いをしたままで御礼参りをしないのは、失礼なことです。

六、お神札(ふだ)とお守り

その違いが分かるかな?

 古代の人は、さまざまな危険や災難から身を守るために、石や骨、鏡や剣といった呪物(じゅぶつ、霊力をもつ物)を、身近にたずさえていました。そうすることにより、神さまのお力をいただき心身が守られると信じられていたのです。時代とともに、その呪物が形を変えて、「お神札」や「お守り」となりました。  お神札は、災難から私たち守ってくれるもので、主に神棚におまつりしします。お守りは、お神札を小さくしたもので、木片や紙片に神社名がしるされており、それをお守り袋に入れて常に身につけます。  これらのお神札やお守りは、神職が丁寧に奉製し、神前にお供えし祈願したもので、神さまのお力が宿ったものです。一年間守っていただいたお神札やお守りは、感謝をこめて神社に納め、さらに次の一年間守っていただく新しいお神札やお守りをお受けください。

七、おみくじ

木に結ぶの?持って帰るの?

 おみくじは、個人の運勢や吉凶を占うために用いられ、種類もいろいろあります。その内容には、吉凶判断・金運・恋愛・失せ物・旅行・待ち人・健康など生活全般にわたる内容がしるされています。神さまのお諭(さと)し(大御心、おおみこころ)として、その内容を今後の生活指針としていくことが大切なことです。おみくじを境内の木の枝に結び付けているのをよく目にしますが、凶のおみくじは木の枝に結び収め、吉のおみくじはお守りとして持ち帰るのが一般的です。おみくじの順番は、大吉・中吉・小吉・吉・末吉・凶・大凶という並び方が標準です。

八、破魔矢(はまや)

魔除け(まよけ)に欠かせぬ縁起物(えんぎもの)

 本来、破魔矢は破魔弓と一式になったものを指し、弓矢を射って作物の豊凶を占うことを起源とするものでした。江戸時代以降子供の成長を祈る縁起物として装飾が施され、初正月や初節句に贈られるようになりました。その後矢だけが魔除けとして、神社で授けられるようになりました。

九、絵馬(えま)

「絵に描いた餅」ならぬ「絵に描いた馬」は何のため?

 絵馬は、祈願や感謝のために奉納する馬の絵を描いた額のことをいいます。古くは、神さまの乗り物として馬が奉納される風習がありましたが、次第に木彫りの馬や粘土製の馬などで代用されるようになり、それが板に描いた馬の絵に代わったのです。

コラム

お賽銭(さいせん)

もともとは身削(みけず)り 五円でいいの?

 お賽銭のはじまりは、神前にお米をまく「散米(さんまい)」や、洗ったお米を紙に包んでお供えする「おひねり」といわれています。参拝者がお祓いの意味で、命のもとである米を捧げたり撒いたりしたのです。このお供えは、時代が下るにしたがって、米の代わりにお金をお供えするようになりました。これを「散銭(さんせん)」といいます。それを後に「賽銭」というようになりました。
 お賽銭は、お参りする前に賽銭箱にいれてお供えします。お賽銭やお供え物を神さまに捧げることは、日々お守りいただいていることを感謝する心の表れとして、あるいはお願い事を叶えていただくためのお祈りのしるしとしてお供えするのです。
 よく「ご縁がありますように」などと語呂合(ごろあ)わせで、五円玉をあげるものだと思っている人が多く見受けられます。しかし、昔から願かけの際には「身削り(みけずり)」などと言って、自分の生活を切り詰めて、贅沢(ぜいたく)をがまんしてお賽銭を上げました。お賽銭の額は、その人のお気持ちで結構ですが、神さまに上げられたお賽銭は、神殿の修理や境内の整備などに使われます。皆さんが生まれ育った地域の鎮守の森と神社は、皆さんのお賽銭によって支えられていることをお忘れなく。