神社ものしり事典

御神徳や御祈祷の紹介、神道の歴史や神話などをご紹介します。

第9章 四季の行事
年中行事って、もとはお祭り

六、お盆

 お盆については、多くの人が仏教の行事と考えているようですが、元来は日本固有の先祖まつりがもとになっています。ところが、江戸時代に入り、幕府が檀家制度を定めて、庶民の先祖供養まで仏式で行うよう強制したため、お盆も仏教の行事と誤解されて、現在に至っているのです。
 我が国では、古くから神まつりとともに、ご先祖さまの御霊(みたま)をお祭りする先祖祭祀が行われ、神と先祖のご加護により平安な生活を過してきました。この神とは、自らとつながりのあるご先祖さまが徐々に昇華(しょうか)されて神となった場合も含んでのご存在なのです。
 年中行事で、お盆とお正月が二大行事として重視されるのも、お正月が神さまを、お盆がご先祖さまをおまつりする行事として、いずれも我々と直接に命の繋(つな)がりのあるご先祖や神々をお招きするという意味を持つからなのです。
 ちなみに、仏教行事のお盆は、『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』という経典によるもので、仏弟子の目蓮が餓鬼道(がきどう)に落ち苦しんでいる母親を救うため、釈迦の教えで七月十五日に安居(あんご、修行)を終えた僧侶を百味(ひゃくみ)の飲食(おんじき)を供えて供養したところ、その功徳(くどく)により母親を含め七世の父母(七代前の先祖)までを餓鬼道から救済することができたという孝行説話に基づくものです。
 仏教が伝来すると、盂蘭盆会(うらぼんえ)の行事が諸寺院で行われるようになり、当初は僧侶の供養が中心でしたが、その後我が国固有の先祖祭祀と結びついて、ご先祖さまをまつるお盆となりました。
 現在、月遅れの八月十五日前後にお盆が行われますが、いずれにしても、日本固有の大切な「先祖まつり」であることに変わりはありません。