神社ものしり事典

御神徳や御祈祷の紹介、神道の歴史や神話などをご紹介します。

第6章 住まいに関するお祭り
昔からのしきたりには意味があります

[竣工祭(しゅんこうさい)・新宅祭(しんたくさい)]

一、建てる時にお願いしたのに、出来上がったら知らん顔?

 「竣工祭・新宅祭」は、完成した建物を祓い清め、末永く安全堅固であることと、その建物に住む人々の繁栄を祈願するお祭りです。
 おまつりする神さまは、上棟祭の場合と同じで、その土地の守り神・氏神さまである「産土大神(うぶすなのおおかみ)」、家屋の守り神である「屋船久久遅神(やふねくくのちのかみ)・屋船豊受姫神(やふねとようけひめのかみ)」、工匠(大工)の守り神である「手置帆負神(たおきほおいのかみ)・彦狭知神(ひこさしりのかみ)」をおまつりします。
 地鎮祭で工事の無事を祈ったのですから、工事が無事に終わったならば、そのことを神さまに感謝し奉告しなければなりません。
 一般住宅と公共建物・会社などでは、建物の構造、規模、神棚の有無、参列者の多少などで違いはあっても、お祭りの趣向は変わりません。
 意外に忘れられているのが、御礼参りです。
 地鎮祭・上棟祭・竣工祭を終えた建築主は、最後には地元の神社に出かけ、家屋の建築工事が無事終了した旨の報告と、今後の家族の安泰を祈願して、御礼参りすることが大事です。
 一生に一度の重儀である家の造作に際しては、真心を込めて感謝の意を表します。

二、竣工祭・新宅祭はどこでするの?

 一般住宅の場合は、家の中心となる座敷の床の間、または神棚のある部屋で行います。公共建物・会社などの場合は、役員室や社長室などの神棚を設けるべき部屋が望ましいですが、工事関係者などが多い場合は、会議室や講堂などを用い、斎竹(いみだけ)を立てた祭場を設けて行います。
 新築した家・会社などを祓い清め、工事が無事に終わり、立派に完成したことを神さまに奉告し、家庭の安全や会社の繁栄を祈ります。また、この際に神棚に宮形(みやがた)を設けて、家庭の平安をお守りいただく神さまをおまつりすることが大切です。
 家庭において宮形をまつるということは、そこに住む家族だけではなく、日々の生活が神さまとともにあって、家族一人一人の幸福はもとより家庭の安泰のために必要なことです。

三、神棚を取り付ける時って何に注意するの?

 新たに神棚の設ける場合は、家の新築や転居の際、また事務所を新しく開いたりする場合が多いと思いますが、家庭においても基本的な違いはありません。
 家庭においては、座敷が一般的ですが、最近では床の間付き座敷も少なくなりましたので、家族がお参りしやすいリビングルームでも結構です。また二階のある家やアパート・マンションなどの場合は、人が神棚の上を歩くような場所は避けるようにして下さい。やむを得ずこのような場所に神棚を設置する場合は、神棚と天井の間に、もう一枚板を張るか、その天井に「雲」とか「空」という字を墨で書いた紙を貼ることもあります。
 神棚の位置ですが、「清らかで明るく高いところに南向き」というのが原則です。家族がお供えをしたり、拝(おが)むのに都合のよい場所であることが大切です。南向きが難しい場合は、東向きでも構いません。ただし、いくら方向が良くても、人の出入りする場所の上、たとえばドアの上や障子(しょうじ)・襖(ふすま)の鴨居(かもい)の上に神棚を設けるのはよくありません。これらの条件を総合的に考えて、神棚をおまつりする場所を決めるのですが、どうしても決めかねるときは、神職の指導を受けて下さい。
 建物が完全に出来上がってから神棚を設けようとしたところ、適当な場所がないということが多くあります。また、間取りや神棚の位置など、家相・方位のおかしい場合もあります。家相・方位は大切なことですから、設計または地鎮祭をお願いする段階で位置や大きさを考慮してほしいものです。

四、中古住宅でもお祭りをするの?

 中古住宅や中古マンションを購入され、あるいは入居するに際しては、新築ではなくとも、新しく神棚に宮形を設けます。
 やはり、購入・入居の経緯を神さまに報告し、新生活の平安をお祈りすることは、新築の場合と同様です。新築・中古を問わず、さまざまな関係者の手を経て入居・居住するのですから、神職によるお祓いを受け、すがすがしい日常をおくることが大切です。
 ここでも、入居に際しては地元の神社へお参りをし、入居の報告とともに、家内安全をあわせてご祈願したいものです。