神社ものしり事典

御神徳や御祈祷の紹介、神道の歴史や神話などをご紹介します。

第6章 住まいに関するお祭り
昔からのしきたりには意味があります

[家相と方位]

 家相とは、土地の形状や家屋の間取り、方位などがその家に住む人に影響を与えるという考えにより吉凶禍福(きっきょうかふく)を判断する基準となる考え方のことです。これは古代中国の陰陽五行説(おんようごぎょうせつ)に由来し、経験的な知識や民間信仰なども交えたものでした。
 また、古くから都市選定の際に「四神相応」という地相が理想的な場所として重視されたことも、この考えに基づきます。四神とは東の方角を司(つかさど)り、水の流れを意味する「青龍(せいりゅう)」、南を司り窪地を意味する「朱雀(すざく)」、西を司り大道を意味する「白虎(びゃっこ)」、北を司り丘陵を意味する「玄武(げんぶ)」の聖獣をいいます。
 このような地形が四神の相応(あいおう)じた吉相の土地とされました。平安京(京都)もこうした条件により選ばれたものですが、これには清涼な土地であることや、排水・交通など都市生活に不可欠な諸条件を充たす経験的な知識が背景にあるともいわれています。
 そのほか、北東の方角を「鬼門(きもん)」として忌み嫌います。鬼門とは病疫が出入りし、災いをもたらす方角であるとされ、都市ではその方角に鬼門除(よ)けの社寺を祀(まつ)りました。以上のことは、家屋についても同様で、特に建築に際しては鬼門の方角に玄関や便所、風呂・台所をつくることは避けます。
 このほか、家屋の間取りなどにも詳細な吉凶判断の基準があり、家相は現在でも民間信仰として根強い影響があります。しかし、土地事情により、全ての条件を充(み)たすのはたいへん難しく、致し方のない場合はそれぞれにあった対応を図らなければなりません。いずれにしても家屋を清浄な環境に保ち、家族が円満に暮らすことが何よりも大切なことといえます。
 家相の基本は、人が住む家に、いかに自然の恵みを取り入れるかという点にあります。まず家相では家の中心からみた「方位」によって間取りの吉凶を判断しますが、その部屋を誰が使うのかということも問題にしますので、家という器のみで家相は論じることはできませんし、家相さえよければそれで良し、というわけでもありません。浄(きよ)く正しい心で神さまを敬い、ご先祖さまを尊ぶ心で日々過ごすことが、健康で平安な家庭生活を築く上で大切です。そのために家屋の設計に際しては神職に相談し、きちんとした形でお祓いを受け、神棚をまつるという心構えが必要です。