神社ものしり事典

御神徳や御祈祷の紹介、神道の歴史や神話などをご紹介します。

第12章 伊勢の神宮
日本民族の総氏神さま

一、正式な名称

 神宮は、一般的には「伊勢神宮」、「お伊勢さま」などと呼ばれ親しまれていますが、正式な名称は「神宮(じんぐう)」です。全国には多くの「~神宮」の称号がつくお社(やしろ)がありますが、「神宮」とのみ称されるのは、伊勢の「神宮」だけです。それだけ特別なお社なのです。
 大和朝廷から東に位置する伊勢は、太陽の昇る地であり、また、常世(とこよ、理想郷)から波が打ち寄せる聖なる海が広がっていました。その海からは豊かな幸(さち)がもたらされます。伊勢は当時の都人にとってまぶしく映る別天地だったのでしょう。
 『古事記』・『日本書紀』が物語る壮大な天孫降臨(てんそんこうりん)の神話。天照大御神(あまてらすおおみかみ)の命を受けた皇孫(こうそん)・瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天降(あまくだ)る場面では、天上の高天原で大御神がつくられた田の稲穂を手渡されます。そして、米を作る暮らしこそが瑞穂(みずほ)の国に繁栄と平和をもたらすのだと託しました。神宮では春先の祈年祭(きねんさい)から秋の神嘗祭(かんなめさい)まで、稲作に関わるお祭りが多く行われます。
 春に祈り、秋に感謝する。瑞穂の国のありようが神代のままに伝えられています。