神社ものしり事典

御神徳や御祈祷の紹介、神道の歴史や神話などをご紹介します。

第12章 伊勢の神宮
日本民族の総氏神さま

七、神宮と神社の関係

 以上のように神宮は一二五社にも及ぶ大神社群です。その中でも内宮御正宮におまつりされている天照大御神(あまてらすおおみかみ)は皇室の御祖神(みおやがみ)として貴いご存在であるとともに、常に我々国民をお守りくださっている日本の総氏神さまです。
 年間千五百回ほどにおよぶ祭典では、皇室国家の繁栄と国民の幸せを願って篤い祈りが一途にささげられています。
 悠久の歴史の流れの中で、深く静かにささげられてきたこの無垢(むく)の祈りこそが、神宮の森厳(しんげん)を醸成(じょうせい)し「日本人の心のふるさと」として人々をいざなってきました。
 神宮は全国で八万社ある神社の中でもその根本となるお社です。しかし神社の場合、寺院などのような本山末寺といった上下関係を表すものはありません。
 神道の祝詞(のりと)のなかでも、非常に古い形態を残している「大祓詞(おおはらえのことば)」に、八百万(やおよろず)の神々が集まり、話し合いの結果、皇孫に豊葦原(とよあしはら)の瑞穂の国(みずほのくに、日本の国)を安らかな国として治めるようにと御委任なされたことが記され、天孫降臨(てんそんこうりん)に際して、国つ神である大国主命(おおくにぬしのみこと)が天照大御神の御子孫に国を譲り渡したように、多くの神々との関係においても、それぞれの神々の立場が尊重され、話し合いの精神をもって諸事が決められています。こうした考えは現在の私たちにも受けつがれており、わが国の美風ともいえます。
 こうした神々の関係は同様に神社についてもいえることで、現在、全国の神社の多くが「神社本庁」のもと、それぞれに祭祀が厳粛に行われるよう努めており、神社界全体として、伊勢の神宮をはじめ、全国神社の振興をはかるための諸活動が行われています。
 伊勢の神宮を格別のご存在として、神社本庁でも特に「本宗(ほんそう)」と仰いでいるのは、そういった全国の神社の総意にもとづいています。