神社ものしり事典

御神徳や御祈祷の紹介、神道の歴史や神話などをご紹介します。

第1章 神さまのお話

六、お稲荷(いなり)さま

 全国の神社の中で最も多いといわれているのが稲荷神社で、総本社は、京都の伏見稲荷大社(ふしみいなりたいしゃ)です。
 ご祭神は宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)で、大宜津比売(おおげつひめ)、保食神(うけもちのかみ)とも称されています。「稲 荷(いなり)」は「稲成(いねな)り」から変化したともいわれ、もともとは農業の神さまとして信仰されていましたが、現在では結びの信仰(ものごとを生み増やす生成発展の信仰)から、諸産業の神さま、特に商売繁盛の神さまとしても信仰されています。
 稲荷神社の社頭には、朱塗りの鳥居が幾重にも建てられていることがありますが、朱色は生命の活性化、躍動感を表すといわれ、災厄を防ぐ色ともいわれます。また、狐の置物もよく見られますが、これは田の神、山の神の信仰との結びつきと考えられ、稲が実るころに山から人里近くに姿を現す狐の姿を、人々は神さまの使いと考えたと思われます。
 稲荷神社のお祭りは「初午(はつうま)祭」が有名です。これは、伏見稲荷大社の神さまが三ヶ峯(みつがみね)に天下(あまくだ)られたのが、和銅四年(七一一年)旧暦二月の初午の日であったことに由来し、毎年二月の最初の午の日にお祭りが行なわれます。